はじめに:「補助金、出してみましょう!」では通らない時代になった
補助金の相談に来られた経営者の方からこんな質問をよくいただきます。
「知り合いが、簡単に補助金もらったと聞いたので、ウチも補助金を申請したい」と。
率直にお伝えします。
確かに、コロナ禍の補助金は比較的簡単な補助金もありました。
でも今は、コロナ禍の補助金と、現在の補助金は別物です。
2020〜2022年頃は、国がコロナ禍からの経済回復を最優先に、大型の補助金を矢継ぎ早に打ち出しました。採択率が高く、比較的通りやすい時期でした。
補助金は「書けば通る」から「よほど優れた計画でないと通らない」制度へと、静かに、しかし確実に変わっています。
この変化を正しく理解せずに申請すると、時間と費用だけが消えていきます。
この記事では、なぜ採択率が下がったのか、そして今の時代に採択されるために何が必要かを、初心者の方にもわかるよう解説します。
コロナ禍の補助金は「緊急支援」だった
まず、コロナ禍の補助金がなぜ通りやすかったのかを理解しておく必要があります。
2020年から始まったコロナ禍において、国は経済を下支えするために、通常では考えられない規模の補助金を次々と打ち出しました。代表的なものが以下です。
| 補助金 | コロナ期の特徴 |
|---|---|
| 事業再構築補助金 | 最大1億円。売上要件を満たせば業種転換を幅広く支援 |
| IT導入補助金 | 採択率が高く、ITツール導入を幅広く補助 |
| 小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型) | 感染症対策の事業計画で採択しやすかった |
この時期の補助金は「まず経済を回す」という政策目的のもと、採択基準が比較的緩く運用されていました。
申請件数が爆発的に増え、認知度も上がりました。
ところがその結果、一部の事業者による不正受給や、実態の薄い計画書による採択という問題が相次いで発覚。
また、補助金をもらった事業者で上手く事業拡大に繋がらないケースが多かったため、国は補助金制度の全面的な見直しに入りました。
採択率の「現実」を数字で見てみよう
百聞は一見にしかず。まず現在の採択率の実態を確認してください。
ものづくり補助金(通常枠ベース)
14次・15次公募では採択率が50%前後を推移していましたが、17次公募では29.4%にまで低下し、その後は30%前半の採択率です。(3人に1人の割合です)
| 公募回 | 採択率 |
|---|---|
| 14次(2023年) | 50.0% |
| 15次(2023年) | 50.2% |
| 16次(2024年) | 50.9% |
| 17次(2024年) | 29.4% |
| 18次(2024年) | 34.1% |
| 19次(2025年) | 32.3% |
| 20次(2025年) | 34.4% |
| 21次(2026年) | 34.8% |
小規模事業者持続化補助金
2024年8月発表の第16回公募の採択率は37.2%と、これまでの公募の中で最も低い採択率となっています。
第17回は51.1%、第18回は48.1%です。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
2024年度までは70%台の採択率ですが、多くの不正が発覚?したため、2025年以降は30-40%の採択率となっています。
申請数が増えたため採択率が低下したと解説している記事も見かけますが、ウソです。
申請数は増えていません、審査が厳しくなったのが原因です。
新事業進出補助金
第1回の採択率は37.2%、第2回の採択率は35.4%。3人に1人しか採択されていません。
なぜ採択率は下がったのか?5つの理由
理由① コロナ緊急支援の終了と「通常モード」への移行
コロナ禍の補助金は、平時の感覚では理解できない規模の予算が投入された「緊急支援策」でした。
事業再構築補助金は2025年の第13回公募で終了し、後継制度の新事業進出補助金はより厳格な審査設計になっています。
事業再構築補助金はコロナ禍での緊急支援策として実施されましたが、新事業進出補助金は恒常的な中小企業支援を目的としており、継続性や独自性、収益性を重視した事業でないと採択されなくなっています。
補助金は「緊急モード」から「平時モード」に戻ったのです。
理由② 不正受給問題による審査の厳格化
コロナ期の補助金では不正受給や実態の薄い申請が問題になりました。
過去の不正受給や不適切な申請が問題となったことで、審査は一層厳格になりました。
「成果が見える」申請、つまり導入効果や改善見込みの定量化など、論理的かつ具体的な説明が求められるようになっています。
かつては「こんな設備を買いたい」と書けば通ったものが、今は「なぜその設備が必要で、導入によって何%効率が上がるのか」を数字で証明しなければなりません。
理由③ 申請件数の急増による競争激化
補助金の認知度が上がったことで、申請件数が増加しています。
2025年度の申請件数の増加は顕著で、2024年度と比較すると申請件数は約1.5倍にも増加しています。
(ただ、これは2024年に補助金募集が一時的にストップしたことが要因と思われます)
「採択できる件数」は予算で決まっています。
申請者が増えれば、採択率は下がるのは当然です。
理由④ 賃上げ要件の追加
現在の補助金は、採択されるだけでなく、採択後に賃上げの実績が求められるものが多くなっています。
ものづくり補助金や省力化補助金では小規模企業は2/3に優遇、IT導入補助金や持続化補助金では最低賃金近傍の企業は補助率引き上げなど、賃上げ・雇用維持に積極的なほど手厚く補助する方向が明確になっています。
賃上げを計画に織り込んだ申請書が有利になる一方、形だけの賃上げ計画は審査員に見抜かれます。
理由⑤ 「事業目的との合致」が厳しく問われる
コロナ期には、補助金の趣旨と少々ずれた内容でも採択されるケースがありました。
しかし現在は違います。
事業再構築補助金では、シミュレーションゴルフやサウナ、無人餃子販売などの類似事業が乱立し問題視されたケースがありました。
新事業進出補助金ではこれらの問題点を踏まえ、より厳しい審査基準が設定されています。
「補助金の目的に沿った、自社独自の事業計画か」が問われます。
他社と似たような内容では採択されません。
では、今の補助金で採択されるには何が必要か
厳しい状況を説明してきましたが、採択されるのが不可能になったわけではありません。
「正しい準備」をした事業者は採択されています。
審査水準が上がっただけで、質の高い申請書は通ります。
今の補助金で採択されるために必要なことを、3点に絞ってお伝えします。
✅ ポイント① 「なぜこの投資が必要か」を論理的に説明できること
審査員は、あなたの会社のことを何も知らない第三者です。
「この設備があれば売上が上がります」では不採択になります。
- 現状の課題は何か
- その課題を解決するための手段として、なぜこの投資が最適か
- 投資後の効果を、具体的な数字(売上○%増、業務時間○時間削減など)で示せるか
この3点を論理的に繋げた事業計画書が求められています。
✅ ポイント② 「公募要領」を熟読してから申請すること
補助金には「補助対象経費」「対象となる事業者」「審査基準」が細かく定められた「公募要領」があります。
この要領を読まずに申請する人が多く、それだけで落とされるケースが後を絶ちません。
公募要領は数十ページに及ぶものもありますが、採択されるためには必読です。
✅ ポイント③ 早めに専門家に相談すること
採択率が下がった今、申請書の質が採否を大きく分けます。
公募が始まってから申請書を書き始めると、間に合わないか、質の低い申請書になりがちです。
少なくとも公募開始の1〜2ヶ月前には準備を始めることが理想です。
認定経営革新等支援機関や行政書士などの専門家に早めに相談することが、採択への近道です。
【まとめ】コロナ後の補助金を正しく理解するための5箇条
1.コロナ期の「通りやすい補助金」は終わった
2.採択率は30〜50%台が現実(制度・時期により変動)
3.審査は厳格化。不正防止・成果重視・目的合致が問われる
4.申請件数の増加で競争は激化している(審査厳格化により、最近の申請者数は落ち着いてます)
5.質の高い事業計画書+早めの準備が採択の条件
補助金は「取りにいく」時代になった
補助金はもはや「申請すれば何とかなる」制度ではありません。
しかし、正しく準備すれば、中小企業の設備投資・事業拡大を力強く後押しする制度であることは変わりません。
「コロナのときに申請して通ったから、今回も大丈夫だろう」という感覚でいると、不採択という結果が待っています。
厳しくなった今の環境だからこそ、専門家を活用して採択率を上げることが重要です。
