「補助金は公募が出てから考える」
ーーこのやり方だと、2026年(令和8年度)以降は間に合わないケースが増えます。
理由はシンプルで、補助金が“書類作成競争”ではなく、経営の中身(数字・体制・賃上げ原資)を問う制度へ、はっきり舵を切っているからです。
実のある実施計画策定には時間が掛かります。
本記事では、国の予算・制度の動きから見える「2026年の募集トレンド」を整理し、採択されるために今すぐ整えるべき準備を、具体例つきで解説します。
1. 2026年の補助金は「薄く広く」ではなく“重点テーマ集中”へ
中小企業庁の予算資料では、支援がいくつかの大きな箱に整理されています。
(1)代表例が、いわゆる「生産性革命」系の枠で、3,400億円規模として示されています。
ここには、成長加速化、デジタル化・AI導入、持続化、事業承継・M&Aなどが含まれる整理です。
(2)また、中堅・中小の大規模投資を支援する枠として4,121億円(新規分を含む)も明示されています。
(3)さらに、革新的製品開発や新事業進出は既存基金(1,200億円規模)を活用といった記載もあり、基金型(複数年運用)の色が濃いのが特徴です。
ここから読み取れるのは、2026年の本質が「新しい補助金が増える」ではなく、重点分野に“通年で投資を促す仕組み”が整うという点です。
つまり、募集は継続しやすい一方で、評価軸はブレずに厳しくなると考えるのが自然です。
2. 2026年の募集トレンド予測①:
人手不足×省力化が“王道”、ただしKPI必須
人手不足が解消する見込みが薄い以上、2026年も中心テーマは省力化・自動化・生産性向上です。
実際、公式サイトでも「中小企業省力化投資補助金」はカタログ注文型/一般型の2類型で申請できることが明記されています。
ただし、2026年に補助金審査を通すには「設備を買いたい」では弱い。
審査で刺さるのは経営KPIです。
KPI(Key Performance Indicator)とは
「重要業績評価指標」の略で、最終的な目標達成に向け工程が順調に進んでいるかを、数値で客観的に測るための中間指標です。
例として、次のような数字を申請書に入れてください。
- 工数:1件あたり作業時間を▲25%(受注→出荷までの段取り削減)
- リードタイム:納期を10日→7日に短縮(生産計画の平準化+自動化)
- 品質:不良率2.0%→1.2%(検査工程の自動判定+標準化)
- 利益:粗利率+2pt(値上げ+ムダ取り+外注削減の合算)
ポイントは「全部良くなります」ではなく、採択後に実績報告で追える数字にすること。
設備選定はその後です。
先に「どの数字を動かす投資か」を決めると、申請書の説得力が一気に上がります。
3. 2026年の募集トレンド予測②:
賃上げは“宣言”ではなく「賃上げ原資の設計」が見られる
近年の補助金は賃上げ要件が強まっています。(というか、ほぼ必須要件になりつつある)
省力化投資補助金(一般型)でも、賃上げに関する指定様式の公開等が行われており、賃上げは制度の中心論点になっています。
2026年に落ちやすいのは、次のパターンです。
- 「補助金が出たら賃上げします」(原資が不明)
- 「売上が増えたら上げます」(実行手段が不明)
- 「毎年1%上げます」(根拠が弱い)
採択される会社は逆で、賃上げ原資の作り方をセットで説明しています。鉄板はこの3つです。
- 価格転嫁(粗利改善):値上げの根拠、交渉の進め方、実施スケジュール
- 省力化(人件費率改善):同じ人数で売上を伸ばす/残業と外注を減らす
- DX(間接工数削減):二重入力・紙・属人化を潰し、管理の手間を落とす
ここまで書けると、賃上げが「お願い」ではなく経営の結果として描けます。
4. 2026年の募集トレンド予測③:
DX・AIは「導入」より“定着と運用”が勝負
生産性革命の枠には「デジタル化・AI導入補助金」が含まれる整理が示されています。
この流れの中で、2026年は“ツール購入”より、現場で回る設計が評価されます。
申請書に最低限入れたいのは以下です。
- 対象業務の棚卸し(受発注、在庫、請求、日報、点検、見積など)
- 運用責任者(誰が、いつ、何を確認するか)
- 教育計画(導入時研修→1か月後フォロー→3か月後定着チェック)
- ログと効果測定(処理件数、処理時間、ミス件数、回収日数、残業時間)
「何を導入(入れる)か」を先に考えると失敗します。
順番は、業務のムダ→標準化→デジタル化→自動化(AI)。これが一番通ります。
5. 2026年の募集トレンド予測④:
取引適正化・価格転嫁が“前提条件”になる
2026年1月から、下請中小企業振興法は「受託中小企業振興法」として施行されます。
あわせて、いわゆる「下請法」が改正され「中小受託取引適正化法(取適法)」として2026年1月施行となります。
補助金審査でこれが直結する場面は増えます。
なぜなら、賃上げ原資の大きな柱が「価格転嫁」だからです。
今からやるべきは、交渉の“気合”ではなく証拠づくりです。
- 原価上昇(材料・外注・物流・人件費)の見える化
- 見積書の内訳(工数・段取り・検査・管理費)
- 価格改定の履歴(いつ、いくら、何を根拠に)
- 取引条件(支払サイト、型保管費、金型償却、設計変更の扱い)
この整理ができている会社は、補助金でも強いです。
6. 2026年に向けて「採択される会社」が今すぐ作る3点セット
最後に、2026年の補助金で勝つための“準備物”を3点に絞ります。
公募が出てから慌てるのではなく、今から整えるべき中身です。
(1)KPIシート(A4一枚でOK)
- 現状値(直近3か月の平均)
- 投資後の目標値(いつまでに)
- 目標達成の打ち手(設備・DX・教育・外注見直し等)
(2)賃上げ原資の設計図
- 粗利改善(値上げ・単価交渉・高付加価値化)
- コスト削減(外注、残業、歩留まり、在庫)
- 生産性改善(省力化、標準化、デジタル化)
(3)運用体制(“誰が回すか”)
- プロジェクト責任者
- 現場のキーマン
- ベンダー・専門家の役割分担
- 導入後の教育と定着スケジュール
この3点が揃うと、申請書は「作文」ではなく経営計画の提出になります。
審査員が一番見たいのはここです。
まとめ:2026年は“準備の差”が採択の差になる
2026年の補助金は、予算の枠が示す通り、省力化、DX・AI、成長投資、賃上げへ重点化が進みます。
さらに取引適正化(取適法・受託中小企業振興法)の施行により、価格転嫁や交渉の土台づくりも避けて通れません。
だからこそ、採択される会社がやっていることは共通しています。
「公募が出てから書く」のではなく、「公募が出る前に経営を整えている」。
行政書士飯島事務所では、補助金の選定から、KPI設計・賃上げ原資の組み立て、採択後の交付申請・実績報告まで一貫支援していますので、ご相談ください。