前回までに「入力の一本化」「情報共有の仕組み化」「業務の可視化」と、小さな会社でも取り組めるDXの実践法をお伝えしてきました。

ところが、支援先の経営者からこんな声をよく聞きます。

「最初の1週間は良かったんですが、気づいたら元の紙とExcelに戻ってました…」

せっかく導入したシステムも、使われなければ意味がありません。
今回は、DXを「一時的な取り組み」ではなく「当たり前の業務」として定着させる5つのコツをご紹介します。

なぜDXは3日坊主で終わるのか?


習慣化のコツをお伝えする前に、なぜDXが続かないのか、その理由を整理しましょう。

よくある失敗パターン

  1. 「慣れたやり方」の方が早い
    新しいシステムは最初は時間がかかります。
    忙しいときほど、慣れた紙やExcelに手が伸びてしまいます。
  2. メリットが実感できない
    入力する人にとって「後で集計が楽になる」は他人事。
    自分にとってのメリットが見えないと継続しません。
  3. チェック機能がない
    「やってもやらなくても誰も何も言わない」状態では、自然消滅します。
  4. トラブル時に戻れない
    システムが使えないとき、すぐに紙に戻してしまい、そのまま戻ってこなくなります。

これらの課題に対処する「仕組み」を作ることが、習慣化の鍵です。

コツ①:「強制力」を持たせる─旧方式を物理的に使えなくする

最も効果的なのは、古いやり方を「できなくする」ことです。

実践例

  • 紙の伝票をなくす
    新システムで入力するまで、次の工程に進めない運用にします。
    紙の伝票用紙そのものを発注しない、という物理的な対応も有効です。
  • Excelファイルを共有フォルダから削除
    「念のため残しておく」が命取り。
    旧Excelは「過去データ参照用」として読み取り専用にし、編集できなくします。
  • 承認フローに組み込む
    「システム入力がないと上司が承認できない」仕組みにすれば、自然と使わざるを得なくなります。

ポイント

選択肢を残すと、人は楽な方に流れます。
「新しいやり方しかできない」状況を意図的に作りましょう。

コツ②:「小さな成功体験」を積ませる─最初の1週間が勝負


最初のハードルを極限まで下げ、早期に「使えた!」という実感を持たせることが重要です。

実践例

  • 初日は「入力だけ」に集中
    いきなりすべての機能を使わせようとせず、「まずは基本情報の入力だけ」など、できることを限定します。
  • 入力補助ツールを用意
    プルダウンメニュー、入力例の表示、エラーメッセージを分かりやすくするなど、迷わず入力できる工夫をします。
  • 1週間後に「before/after」を見せる
    「先週まで3時間かかっていた集計が、今は1クリックでできました」など、目に見える変化を共有します。

ポイント

人は「できた」という成功体験があると、次も使おうという気持ちになります。最初の1週間で小さな達成感を味わわせましょう。

コツ③:「自分ごと化」する─現場にメリットを見せる


入力する本人が「自分にとって得だ」と感じなければ、継続しません。

実践例

  • 入力者本人の負担を減らす設計
    「入力したら、今まで手書きしていた日報が自動生成される」など、入力者自身の手間が減る仕組みにします。
  • リアルタイムフィードバック
    「今月の目標達成率80%」など、入力するとすぐに自分の状況が見えるようにします。
    ゲーム感覚で進捗が分かると、モチベーションが上がります。
  • 「面倒が減った」を言語化
    「月末の報告資料作成が2時間→30分になった」「上司への口頭報告が不要になった」など、具体的な時短効果を数字で示します。

ポイント

「会社のため」では動きません。
「自分の仕事が楽になる」「自分の成果が見える」というメリットを明確に伝えましょう。

コツ④:「見える化」と「声かけ」─放置しない仕組み

誰も見ていないと、自然に使わなくなります。適度なチェック機能が必要です。

実践例

  • ダッシュボードで「使用状況」を可視化
    「今週の入力率」「未入力者」などを一目で分かるようにします。
    サボりが見えると、自然とプレッシャーになります。
  • 週1回、5分間の「DX振り返りタイム」
    朝礼や定例会議で「今週の入力状況」を共有。
    未入力者を責めるのではなく、「困っていることはないか?」と声をかけます。
  • リーダーが率先して使う
    経営者や管理職が「自分も毎日使っている」姿を見せることで、現場の意識が変わります。

ポイント

監視ではなく「サポート」の姿勢で。
困っている人がいたら、すぐにフォローする体制を作りましょう。

コツ⑤:「トラブル対応マニュアル」を用意─いざというときに戻さない

システムが使えないとき、すぐに紙に戻してしまうと、そのまま元に戻らなくなります。

実践例

  • 「システムダウン時の対応手順」を明文化
    「ネットが繋がらない→スマホのテザリングで入力」「PCが故障→別のPCから入力」など、代替手段を事前に決めておきます。
  • 「暫定入力シート」を用意
    緊急時だけ使える簡易Excelを用意し、「システム復旧後、必ず転記する」ルールを徹底します。
  • サポート窓口を明確に
    「分からないことがあったら、まず〇〇さんに聞く」「毎週水曜の午後は質問タイム」など、相談しやすい環境を作ります。

ポイント

トラブルは必ず起こります。
そのときに「やっぱり紙が安心」と思わせない準備が大切です。

習慣化の「ゴール設定」─3ヶ月で定着を目指す

DXの習慣化には、段階的なゴール設定が効果的です。

推奨スケジュール

【1週目】慣れる期間

  • 目標:全員が1日1回は触る
  • やること:とにかく使ってみる、質問しまくる

【1ヶ月目】定着期間

  • 目標:入力率80%以上
  • やること:週次で振り返り、改善点を洗い出す

【3ヶ月目】自走期間

  • 目標:誰も意識しなくても使っている状態
  • やること:トラブル対応を現場で自己解決できるようにする

3ヶ月続けば、それは「習慣」になっています。

まとめ:仕組みがあれば、DXは続く

DXの習慣化は「根性」ではなく「仕組み」で実現します。

今日からできる5つのコツ

  1. 強制力: 旧方式を使えなくする
  2. 成功体験: 最初の1週間で小さな達成感を
  3. 自分ごと化: 入力者本人のメリットを明確に
  4. 見える化: 使用状況を可視化し、声をかける
  5. トラブル対応: いざというときに戻さない準備

DXは「導入」がゴールではなく、「使い続けること」がスタートです。
小さな仕組みの積み重ねで、あなたの会社のDXを確実に定着させましょう。