前回までに、DXの基礎(入力一本化→情報共有→可視化)と習慣化の仕組みをお伝えしてきました。
多くの企業で「データの可視化」までは成功します。
ダッシュボード(指標の一覧表)に数字が並び、グラフが表示され、「見える化できた!」と満足する段階です。
しかし、ここで止まってしまう会社が非常に多いのです。
「データは見えるようになったけど、で、どうすればいいの?」
今回は、可視化したデータを「眺めて終わり」にせず、実際の経営判断や業務改善に活かすための3つの視点をご紹介します。
データを活かせない会社の「典型パターン」
まず、なぜデータが意思決定に繋がらないのか、よくある失敗パターンを見てみましょう。
パターン①:数字を眺めるだけで終わる
「今月の売上は120万円でした」
→で? それが良いの? 悪いの? 何をすべき?
数字を見ても、それが何を意味するのか、次に何をすべきかが分からなければ、データは活きません。
パターン②:全部のデータを見ようとする
ダッシュボード(一覧画面)に50個の指標が並んでいる…
→結局どこを見ればいいか分からず、見なくなる
情報が多すぎると、かえって何も見えなくなります。
パターン③:過去のデータしか見ない
「先月は良かったね」「去年より下がったね」
→過去を振り返るだけで、未来の行動に繋がらない
データは「過去の記録」ではなく「未来の行動」のために使うものです。
では、どうすればデータを意思決定に活かせるのか。
3つの視点を見ていきましょう。
視点①:「比較」する─数字に意味を持たせる
単独の数字には意味がありません。「何かと比較」することで、初めて判断材料になります。
比較の4つの軸
1. 目標との比較
例:今月の売上120万円 vs 目標150万円
→達成率80%。あと30万円足りない。残り2週間で何をすべきか?
活かし方:
- 未達の場合:どの商品・顧客で挽回するか具体的な行動計画を立てる
- 達成済の場合:前倒しで来月の準備に入る
2. 過去との比較
例:今月120万円 vs 先月100万円 vs 去年同月110万円
→前月比+20%、前年比+9%。伸びている。何が要因か?
活かし方:
- 伸びた要因を分析し、再現性のある施策を見つける
- 逆に下がっている項目があれば、早期に手を打つ
3. 他部門・他店舗との比較
例:A店120万円 vs B店80万円 vs C店150万円
→C店が好調。何をしているのか?
活かし方:
- 好調な部門のやり方を他に横展開
- 低調な部門には集中的にテコ入れ
4. 業界平均との比較
例:自社の営業利益率8% vs 業界平均12%
→まだ改善の余地がある
活かし方:
- 同業他社のベンチマークを意識した目標設定
- 補助金申請時の「改善の必要性」を示す根拠になる
実践のコツ
ダッシュボードには必ず「比較対象」を並べて表示しましょう。
- 売上グラフには「目標ライン」を引く
- 当月実績の隣に「前月」「前年同月」も表示
- 色分けで良し悪しを一目で判断できるようにする(目標達成=緑、未達=赤など)
視点②:「分解」する─問題の本質を見つける
全体の数字だけ見ていても、次の手は見えません。
「なぜそうなったのか?」を分解して掘り下げることで、具体的な行動が見えてきます。
分解の3ステップ
ステップ1:要素に分解する
例:売上が前月比で20%減少
→売上 = 客数 × 客単価
- 客数:前月200人→今月180人(-10%)
- 客単価:前月5,000円→今月4,500円(-10%)
両方下がっている(´・ω・`)
ステップ2:さらに細かく分解する
客数が減った理由は?
- 新規顧客:前月50人→今月30人(-40%)
- リピーター:前月150人→今月150人(変わらず)
→新規が激減している(´・ω・`)
客単価が下がった理由は?
- 商品A(高単価):前月売上80万円→今月50万円
- 商品B(低単価):前月売上20万円→今月30万円
→高単価商品が売れていない!
ステップ3:打ち手を決める
明らかになった問題:
- 新規顧客の獲得が減っている
- 高単価商品が売れていない
具体的な打ち手:
- 新規向けキャンペーンを実施
- 商品Aの販促強化、スタッフへの説明トレーニング
実践のコツ
「なぜ?」を3回繰り返しましょう。
表面的な数字の変化だけでなく、その背後にある要因を掘り下げることで、的確な対策が見えてきます。
「売上が減った」→「客数が減った」→「新規が減った」→「広告を出していなかった」→「広告予算を確保する」
このように、問題の根本原因までたどり着けば、解決策は明確になります。
視点③:「予測」する─先回りして動く
過去のデータを見るだけでは遅い。
データから「これから何が起こるか」を予測し、先回りして動くことが重要です。
予測の3つの活用法
1. トレンドを読む(将来予測)
例:過去6ヶ月の売上推移を見る
- 1月:100万円
- 2月:105万円
- 3月:110万円
- 4月:115万円
- 5月:120万円
- 6月:125万円
→月5万円ずつ伸びている。この調子なら12月には155万円に到達する見込み。
活かし方:
- 目標設定の根拠になる(「なんとなく150万円」ではなく、データに基づいた目標)
- 必要な人員・在庫・資金を先回りで準備できる
- 補助金申請時の「事業計画の妥当性」を示す根拠になる
2. 異常値を検知する(早期警戒)
例:毎月コンスタントに注文していた顧客Aの発注が2ヶ月連続でゼロ
→何か問題が起きている可能性。
放置すると取引停止になるかも。
活かし方:
- すぐに顧客に連絡し、状況をヒアリング
- 問題があれば早期対応で関係修復
- データがなければ「気づいたときには手遅れ」
3. パターンを見つける(季節性・規則性)
例:過去3年のデータを見ると、毎年8月と12月に売上が跳ね上がる
→季節要因がある。
今年も同じパターンが予想される。
活かし方:
- 繁忙期の前に在庫・人員を確保
- 閑散期には新規開拓やメンテナンス作業に時間を使う
- キャッシュフローを予測し、資金繰りに余裕を持たせる
実践のコツ
「もし〜なら」のシミュレーションをしましょう。
- 「もし今のペースで伸び続けたら、6ヶ月後はどうなる?」
- 「もし新規獲得が止まったら、売上はどこまで落ちる?」
- 「もし人件費が10%上がったら、利益はどうなる?」
Excelの簡単な計算式でも十分です。
未来を「なんとなく」ではなく「数字で」想像できるようになります。
実践例:ある小売店の「データ活用サイクル」
実際にデータを活かして業績を改善した事例をご紹介します。
背景
- 従業員5名の小さな雑貨店
- DXで売上・来店客数・商品別販売数を可視化
- しかし当初は「眺めるだけ」で活用できていなかった
データ活用の実践
【視点①:比較】
- 毎週月曜の朝礼で「先週の売上 vs 目標」を共有
- 色分けで達成・未達を一目で判断
- 未達の週は「今週何をするか」を全員で話し合う
【視点②:分解】
- 売上を「商品カテゴリ別」「曜日別」「時間帯別」に分解
- 「土日の午後に女性向け雑貨がよく売れる」ことが判明
- →土日午後は女性向け商品を前面に配置、スタッフも女性を配置
【視点③:予測】
- 過去の販売データから「母の日前は売上が1.5倍」と判明
- →今年は2週間前から在庫を1.5倍に増やし、売り場も拡大
- 結果:前年比120%の売上を達成
成果
3ヶ月で前年比+18%の売上増加。
データを「行動」に繋げたことが成功の鍵でした。
データ活用の「型」を作る─会議で話し合う
データを意思決定に活かすには、「データを見て話し合う場」を定期的に作ることが重要です。
おすすめの運用フロー
【毎週の定例会議(30分)】月ごとでもOK!
- 比較:先週の実績 vs 目標を確認(5分)
- 分解:未達項目があれば要因を掘り下げる(10分)
- 予測:今週の予測と必要な対応を決める(10分)
- 決定:具体的な行動を担当者に割り振る(5分)
この「型」を繰り返すことで、データを見る→考える→動く、のサイクルが習慣化します。
まとめ:データは「見る」ものではなく「使う」もの
可視化したデータを意思決定に活かすための3つの視点
- 比較する:目標・過去・他部門と比べて、数字に意味を持たせる
- 分解する:「なぜ?」を繰り返し、問題の本質と打ち手を見つける
- 予測する:過去から未来を読み、先回りして動く
データは「眺めるため」ではなく「動くため」にあります。
可視化はゴールではなく、スタートです。データを武器に、小さな会社でも「勘と経験」ではなく「根拠ある判断」ができるようになります。
せっかくデータが見えるようになったのですから、それを最大限に活かして、あなたの会社の成長に繋げましょう。