IT人材不足なのに、デジタル化が進んでいる会社がある

「人材採用が難しいから、DXは後回し」——そう考えている経営者は少なくありません。
しかし実際には、IT担当者ゼロ・または最小限のリソースでも、業務のデジタル化を着実に進めている中小企業が存在します。

その会社に共通しているのは、「採用できるまで待つ」のではなく、3つのアプローチを状況に応じて使い分けているという点です。

その3つとは、「外注」「クラウドツール」「仕組み化」です。

この3つを「何に使うか」「いつ使うか」を正しく判断できれば、IT担当者がいなくても業務のデジタル化は確実に前進します。

3つのアプローチの基本

まず、それぞれの特性を押さえておきましょう。

アプローチ概要向いているケースコスト感
外注専門家・フリーランス・IT会社に依頼自社にないスキルが必要な作業中〜高(スポット費用)
クラウドツール既製品のSaaSを導入・活用
(Saas:クラウドのソフトウェア)
汎用的な業務の効率化低(月額サブスク)
仕組み化業務フロー・マニュアル・ルールを整備ツール定着・属人化解消ほぼゼロ(時間は必要)

この3つは「どれが正解」ではなく、課題の性質によって最適解が変わります
多くの中小企業が失敗するのは、1つのアプローチに固執してしまうからです。

アプローチ①:外注——「できないこと」を専門家に任せる

どんなときに外注を使うか

外注が有効なのは、自社のスキルでは解決できない、かつ一度作ってしまえば長く使える成果物が必要な場面です。
具体的には次のようなケースです。

  • 自社専用の業務システムやWebアプリの開発
  • ECサイト・予約サイトの構築
  • 既存システムの改修・連携
  • データ分析基盤の整備
  • セキュリティ診断・対策

外注先の選び方:3つの選択肢

① IT開発会社への発注
規模が大きい案件や品質保証が必要な開発に向いています。
費用は高くなりますが、プロジェクト管理も含めて対応してもらえます。

② フリーランスエンジニアの活用
IT人材の不足が深刻化する中、フリーランスとして活動するIT人材は急速に増えています。
2025年のITフリーランス市場規模は1兆1,849億円に達すると予測されており、クラウドソーシングサービス(ランサーズ、ランサーズ等)やフリーランスエージェントを通じて、比較的低コストで即戦力の人材に依頼できます。
小規模な案件や特定の機能開発には特に有効です。

③ ITコンサルタント・認定支援機関の活用
「何を作ればいいかわからない」「業者に言われた通りに発注して高額になってしまった」という問題を防ぐために、まず要件整理・業者選定のサポートをITコンサルタントや認定支援機関に依頼する方法があります。
発注内容を正確に具体化、言語化できるだけで、外注費を大幅に抑えられることがあります。

外注で失敗しないための3原則

原則①:「何を作るか」を先に自分で決める
「業者に丸投げ」は最もコストが膨らむパターンです。
「どの業務を」「どう改善したいか」の要件を先に整理してから発注しましょう。

原則②:相見積もりを取る
同じ要件でも、見積もりは業者によって数倍の差が出ることがあります。
最低3社から見積もりを取ることが基本です。

原則③:「保守・運用」まで確認する
作って終わりではなく、その後の修正・障害対応・機能追加をどう行うかを契約前に確認しておきましょう。
外注先が変わった場合に対応できる体制(ドキュメントの引き渡し等)も重要です。

アプローチ②:クラウドツール 「汎用業務」を既製品で解決する

どんなときにクラウドツールを使うか

多くの中小企業に共通する業務(会計・勤怠・請求書・顧客管理・社内連絡など)は、優れたクラウドサービスが存在します。
これらは自社専用に作る必要がなく、月額数千円から導入できるのが大きな強みです。

IT人材がいない会社こそ、「作る」より「使う」を優先すべきです。

業務別クラウドツール選定の考え方

会計・経理のデジタル化
freee会計、マネーフォワードクラウド会計などのクラウド会計ソフトは、銀行・カードとの自動連携で仕訳作業を大幅に削減します。
税理士との連携もスムーズになります。インボイス対応の観点からも早期導入が推奨されます。

勤怠管理のデジタル化
紙のタイムカードや手書き台帳は、集計ミスと管理コストの温床です。
KING OF TIME、ジョブカンなどのクラウド勤怠管理は、スマートフォンで打刻でき、集計・有休管理・残業アラートまで自動化されます。

請求書・見積書のデジタル化
Misoca、インボイスDXなどを使えば、テンプレートから数分で作成・送付が完了します。
電子帳簿保存法への対応も自動的に整います。

社内コミュニケーションのデジタル化
電話・FAX・メールが混在している状況は、情報の抜け漏れと確認コストを生みます。
ChatworkやSlackを導入することで、案件ごとの情報が一元化され、社員が10名以下の会社でも大きな効果が出ます。

クラウドツール導入で失敗する原因

ツールを入れたのに使われない——これが最も多い失敗パターンです。
原因は次の3つです。

  • 操作が複雑で覚えられない(シンプルなツールを選ぶ)
  • 「なぜ変えるのか」が伝わっていない(導入目的を社員に説明する)
  • 紙・旧方法と新ツールが並走し続ける(切り替え日を明確に設定する)

ツール選定と同時に「定着させる仕組み」を作ることが重要です。

アプローチ③:仕組み化 「ツール・外注の効果」を持続させる土台

仕組み化がなければ何も続かない

外注で良いシステムを作っても、クラウドツールを導入しても、「使い方がわかる人しか使わない」「担当者が辞めたら止まった」では意味がありません。
仕組み化とは、誰がやっても同じ結果になる状態をつくることです。

これはITとは無関係に見えますが、実はデジタル化の最大の壁がここにあります。

仕組み化の3要素

① 業務フローの文書化
「誰が・何を・いつ・どのツールで行うか」を図や手順書で明文化します。
A4用紙1枚でも構いません。これがあるだけで、新人でも迷わず操作でき、引き継ぎコストが激減します。

② 定期レビューの仕組み
導入から1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月後に、「実際に使われているか」「改善点はないか」を確認する場を設けます。
ツールは入れたら終わりではなく、運用しながら改善することで初めて効果が出ます。

③ 担当者・責任者の明確化
「誰が困ったときに対応するか」を決めておきます。
IT担当者がいなくても、「このツールの窓口はAさん」という形で役割を割り振ることで、現場の混乱を防げます。

3つのアプローチの「使い分け判断フロー」

以下のフローで、どのアプローチを取るか判断します。

課題を特定する
 ↓
「既製のクラウドツールで解決できるか?」
 ├─ YES → クラウドツールを導入(+仕組み化)
 └─ NO  ↓
  「自社にそのスキル・技術があるか?」
  ├─ YES → 内製 or ツールと組み合わせ
  └─ NO  → 外注(フリーランス・IT会社・専門家)
       (+仕組み化で定着させる)

どのルートを選んでも、最後に「仕組み化」が必要になります。
ツールや外注は「手段」であり、それを社内に根付かせる「仕組み化」が「目的」だと考えると整理しやすくなります。

補助金を活用してコストを下げる

外注費・ツール導入費の負担を下げるには、補助金の活用が有効です。

「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金)は、クラウドツールの導入費用に最大450万円(補助率1/2〜4/5)が補助されます。
インボイス対応のソフトウェアとあわせてPCやタブレットも対象になります。

また、ものづくり補助金・新事業進出補助金は、自社専用システムの開発(外注費含む)が補助対象になる場合があります。
「外注費が高くて踏み出せない」という状況でも、補助金を組み合わせることで実質負担を大幅に抑えられます。

補助金の活用も検討することで費用対効果を最大化にすることができます。

まとめ:「3つのアプローチ」を使い分けるのが経営判断

アプローチ使うべき場面注意点
外注自社スキルで作れない・一度作れば長く使える成果物要件整理を先に行う。相見積もり必須
クラウドツール汎用業務・月額コストで使えるものシンプルなツールを選ぶ。定着が最重要
仕組み化常に・全ての場面で必要ツール・外注と同時に設計する

IT人材不足は、今後も解消されない構造的な問題です。
「採用できれば解決する」という前提を手放し、「いない前提で3つのアプローチを使い分ける」発想に切り替えた会社が、デジタル化競争を着実に勝ち抜いています。

「外注先の選定を一緒に考えてほしい」「どのツールが自社に合うか相談したい」「補助金でコストを抑えたい」という方は、お気軽にご連絡ください。

月額月額数万円の社外IT部長

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