はじめに:「わからない言葉が多すぎる」は経営リスクになる

「DXが大事とは聞くけど、何をすればいいのかよくわからない」 「ITベンダーの話についていけない」 「補助金の申請書に専門用語が並んでいて困る」

このような声を、中小企業の経営者の方から日々お聞きします。

中小企業のDX実施率はわずか4.6%にとどまるという調査データがあります。
多くの経営者がDXの必要性を感じながらも、なかなか前に進めない背景には、「用語・概念がわからない」という壁が大きく立ちはだかっています。

特に中小企業・小規模事業者の場合、経営者が先頭に立ってDX・デジタル化についての理解を深めることが大切です。

IT用語を正しく理解することは、単なる知識の習得ではありません。
ITベンダーに丸投げせず対等に話し合い、補助金申請書を自信を持って書き、社員に的確な指示を出すための「経営の武器」です。

この記事では、中小企業経営者が最低限押さえておくべきIT・DX用語を50個、カテゴリ別にわかりやすく解説します。
特に赤字用語はよく使われますのでこの用語だけでも参考に見ておいてください。

① DX・デジタル化の基本用語(10語)


1. DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革し、競争力を高めること。単なるIT導入とは異なり、「会社のあり方を変える」という視点が重要です。

2. デジタル化(Digitization)
紙の帳票や手作業の業務をデジタルデータに置き換えること。DXの第一歩です。「伝票を電子化する」「手書き台帳をExcelにする」などが該当します。

3. IT化
IT化は、情報技術を活用して業務プロセスなどを効率化することで、その視点は主に社内に向けられています。一方のDXは、ITを含むデジタル技術を駆使してビジネスを変革し、新しい価値を生み出すことで、その視点は「顧客や社会」に向けられています。

4. BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)
業務プロセスを根本から見直して再設計すること。「今のやり方をそのままシステム化する」のではなく、「そもそもこの業務は必要か」から問い直す考え方です。

5. 2025年の崖
経済産業省が2018年に提唱した概念。古いシステムを使い続けることで、2025年以降に競争力の低下や技術的なリスクが深刻化するという警告です。

6. レガシーシステム
長年使い続けている古いシステムのこと。改修が難しく、新しいシステムとの連携も困難な場合が多いです。

7. DX推進指標
経済産業省が提供する、企業がDXの取り組み状況を自己診断するためのツールです。補助金申請でも参考にされます。

8. デジタルガバナンス・コード
経済産業省が策定した、企業のDX推進に関する指針。経営者に求められる行動を示しており、2024年9月に改訂されたバージョン3.0では、経営者への伝わりやすさを重視して構成が大幅に見直されました。

9. PoC(概念実証)
新しいシステムやアイデアが実際に機能するかを、小規模に試す検証作業のこと。「まず小さく試して、効果が出たら拡大する」という進め方のことです。

10. ROI(投資対効果)
投資した費用に対して、どれだけの利益・効果が得られたかを示す指標。「100万円のシステム導入で年間200万円の人件費が削減できた」ならROIは高いと判断します。

② クラウド・インフラ系用語(10語)

11. クラウド(クラウドコンピューティング)
インターネット経由でサーバーやソフトウェアを利用するサービスのこと。自社でサーバーを購入・管理する必要がなく、月額課金で使えるため中小企業でも導入しやすいです。

12. SaaS(サース)
インターネット経由で提供されるソフトウェアサービス。会計ソフトのfreee・マネーフォワード、グループウェアのGoogleWorkspace・Microsoft365などが代表例です。月額契約で使えます。

13. IaaS(イアース)
クラウド上でサーバーやネットワークなどのインフラだけを提供するサービス。AWSやAzureが有名。自社でシステムを構築したい場合に利用します。

14. オンプレミス
自社内にサーバーやシステムを設置・管理する従来型の方式。クラウドの対義語として使われます。

15. API(エーピーアイ)
異なるシステムやアプリが互いに連携するための「窓口」のようなもの。「会計ソフトと受発注システムをAPI連携して、自動で仕訳が入力される」といった使い方をします。

16. サーバー
データを保存・処理・提供するコンピュータのこと。クラウドを使えば自社でサーバーを持たなくても済みます。

17. VPN(ブイピーエヌ)
インターネット上に仮想の専用回線を作り、安全に通信する技術。テレワーク時に会社のシステムに安全にアクセスするために使われます。

18. バックアップ
データが消えた・壊れた場合に備えて、データのコピーを保存しておくこと。クラウドストレージを活用すると自動でバックアップが取れます。

19. セキュリティパッチ
システムやソフトウェアの脆弱性(セキュリティの穴)を修正するための更新プログラム。適用を怠るとサイバー攻撃の標的になります。

20. ランサムウェア
感染するとパソコン内のデータを暗号化し、解除と引き換えに金銭を要求するウイルスの一種。中小企業への被害が急増しており、バックアップと定期的なアップデートが最大の対策です。

③ AI・データ活用系用語(10語)

21. AI(人工知能)
人間の知的作業をコンピュータが模倣する技術の総称。画像認識、文章生成、需要予測など、経営のあらゆる場面で活用が広がっています。

22. 生成AI(ジェネレーティブAI)
テキスト・画像・動画などのコンテンツを自動生成するAI。ChatGPTやClaude(クロード)が代表例。見積書の文案作成、マーケティング文章の作成など業務効率化に直結します。

23. 機械学習
大量のデータからコンピュータが自動的にパターンやルールを学習する技術。需要予測や不良品検知などに活用されています。

24. ビッグデータ
企業が日々生成する大量のデータのこと。販売データ、顧客データ、設備の稼働データなどを分析することで、経営判断の精度が上がります。

25. データドリブン経営
勘や経験に頼るだけでなく、データを根拠に意思決定する経営スタイルのこと。売上・在庫・顧客データを可視化し、戦略立案に活かします。

26. KPI(重要業績評価指標)
目標達成度を測るための具体的な数値指標。「月間新規顧客数10件」「受注率30%」など。DX推進でも「何の数字を改善したいか」を明確にすることが重要です。

27. ダッシュボード
複数の指標やデータを一画面にまとめて視覚的に確認できるツール。会計・売上・在庫などをリアルタイムで把握できます。

28. RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
定型的な事務作業(データ入力・転記・集計など)をソフトウェアロボットに自動化させる技術。人手不足の解消に効果的です。

29. OCR(光学文字認識)
紙の書類や画像に書かれた文字をデジタルデータに変換する技術。紙の請求書・領収書のデータ化に使われます。

30. IoT(モノのインターネット)
センサーなどを搭載した機器がインターネットに接続し、データを収集・送受信する仕組み。工場の設備稼働状況の遠隔監視などに使われます。

④ 業務系・経営系IT用語(10語)

31. ERP(基幹業務システム)
会計、在庫、受発注、人事など会社の基幹業務を一元管理するシステム。代表例はSAP・弥生・マネーフォワードクラウドERP。

32. CRM(顧客関係管理)
顧客情報・商談状況・対応履歴などを一元管理するシステム。SalesforceやHubSpotが有名。リピーター獲得や営業効率化に活用します。

33. SFA(営業支援システム)
営業活動の進捗・商談情報・訪問履歴などを管理するシステム。CRMと連携して使うことが多いです。

34. 電子帳簿保存法
税務関係書類の電子データ保存を認める法律。2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化されました。会計・請求書のデジタル化が急務です。

35. インボイス制度
2023年10月から始まった消費税の仕入税額控除の新制度。適格請求書(インボイス)の発行・保存が必要となり、会計システムの対応が必須です。

36. EDI(電子データ交換)
取引先との受発注・請求などのビジネス文書をネットワーク経由で電子的にやり取りする仕組み。大手企業との取引でも求められるケースが増えています。

37. グループウェア
社内のコミュニケーション・スケジュール・ファイル共有を一元化するツール。Google Workspace・Microsoft365・Cybozu(サイボウズ)などが代表例。

38. BCP(事業継続計画)
災害やサイバー攻撃などの緊急事態が発生した際に、事業を継続・早期復旧するための計画。データのクラウド化が重要な対策の一つです。

39. テレワーク・リモートワーク
オフィス以外の場所で働く働き方。クラウドシステムとVPNが整備されていれば、中小企業でも十分実現できます。

40. ペーパーレス化
紙の書類をデジタルに置き換えること。電子帳簿保存法対応とも連動しており、コスト削減・業務効率化・テレワーク推進の基盤になります。


⑤ セキュリティ・IT管理用語(10語)

41. サイバーセキュリティ
コンピュータやネットワークへの不正アクセス・情報漏えいを防ぐための対策全般。中小企業も標的になるため、最低限の対策は必須です。

42. 多要素認証(MFA)
パスワードに加えて、スマホへの通知や指紋認証など複数の方法で本人確認を行うセキュリティ技術。不正ログイン防止に非常に効果的です。

43. ゼロトラスト
「社内だから安全」という前提を捨て、すべてのアクセスを検証するセキュリティの考え方。テレワークが増えた現代に適した考え方です。

44. 脆弱性(ぜいじゃくせい)
システムやソフトウェアのセキュリティ上の弱点・穴のこと。放置するとサイバー攻撃に利用されるため、定期的なアップデートが重要です。

45. フィッシング詐欺
本物そっくりの偽メール・偽サイトで個人情報やパスワードをだまし取る手口。社員教育と迷惑メールフィルターの導入が対策になります。

46. エンドポイントセキュリティ
パソコン・スマートフォン・タブレットなど個々の端末を守るためのセキュリティ対策。ウイルス対策ソフトの導入がその基本です。

47. クラウドストレージ
インターネット上にデータを保存・共有できるサービス。Google Drive・Dropbox・OneDriveなど。バックアップ・テレワーク・ペーパーレス化に活用できます。

48. SLA(サービスレベル契約)
ITサービス提供者が保証するサービス品質の水準を定めた契約。「稼働率99.9%」「障害対応4時間以内」などを確認してから契約しましょう。

49. ユーザビリティ
システムやアプリが使いやすいかどうかを示す指標。「操作が複雑すぎて社員が使ってくれない」という失敗を防ぐために、導入前に試用することが重要です。

50. IT導入補助金
中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際に使える国の補助金。会計ソフト・受発注システム・勤怠管理システムなどが対象で、DX・デジタル化のための代表的な補助金として広く活用されています。


まとめ:用語を知ることが、DX推進の第一歩

IT用語を理解することは、単なる知識の習得ではありません。
ITベンダーや支援機関と対等に話し合い、自社に本当に必要な投資を見極めるための「経営判断力」を磨くことに直結します。

社長がまずDXの必要性を認識した上でリーダーシップを発揮して、経営層や従業員を含む組織全体へと意識改革を広げていくことが、DXを成功させるポイントです。

今回ご紹介した50語を全部覚える必要はありません。
まずは自社の業種・業務に関連するものから理解を深め、「次のIT投資で何をしたいか」を言語化することから始めてください。