名前が似ている4つの制度を徹底整理

中小企業の経営支援をしていると、経営者の方から次のような質問をよく受けます。

「経営革新計画と経営力向上計画って何が違うの?」
「経営改善計画と早期経営改善計画は、どちらを使えばいい?」

いずれも国や自治体が用意している「経営計画系の支援制度」ですが、目的・対象企業・難易度・得られるメリットは大きく異なります。

この記事では、行政書士としての実務経験をもとに、中小企業経営者が“自社に合う制度を正しく選べる”ことを目的に、4つの制度を分かりやすく解説します。

1.経営革新計画とは

【新事業・新分野に挑戦する企業向け】

制度概要

経営革新計画は、都道府県が承認する制度で、「新商品」「新サービス」「新たな生産方式」「新しいビジネスモデル」など、これまで行っていなかった新たな取組(経営革新)を計画としてまとめ、承認を受けるものです。

単なる改善ではなく、“新しさ”が求められるのが特徴です。

主なメリット

  • 補助金申請時の加点
  • 融資審査での評価向上
  • 信用保証枠の拡大
  • 自治体によっては入札加点・独自支援策(東京都ではこの補助金があります)

難易度

やや高め

都道府県で難易度が大きく変わ傾向にあります。東京都は難易度4以上の難関です。
新規性・実現可能性・数値計画の整合性が重視されるため、しっかりした事業計画が必要になります。

向いている企業

  • 新事業・新サービスを本格的に立ち上げたい
  • 成長路線を明確に打ち出したい
  • 補助金採択率を高めたい企業(補助金の審査加点になっていることが多い)

2.経営力向上計画とは

【最も使いやすく、実務で活用頻度が高い制度】

制度概要

経営力向上計画は、国(主務大臣)が認定する制度です。
テーマは非常にシンプルで、「生産性向上」「業務効率化」「設備投資」「人材育成」など。

多くの中小企業が該当しやすく、「改善型の計画」として位置づけられます。

主なメリット

  • 固定資産税の軽減(設備投資時)
  • 各種補助金(ものづくり補助金等)の加点
  • 金融機関からの評価向上

難易度

やや低め

計画書の分量も比較的少なく、初めて計画制度を使う企業にも適しています。

向いている企業

  • 設備投資を予定している
  • 補助金を活用したい
  • まずは制度活用の実績を作りたい

👉 最初に検討すべき王道制度と言えます。

3.早期経営改善計画(プレ405事業)とは

【悪化する前の“予防型”制度】

制度概要

早期経営改善計画は、「まだ致命的ではないが、将来に不安がある企業」向けの制度です。

財務内容の見える化と、簡易的な行動計画の作成が中心となります。

主なメリット

  • 財務状況の整理・可視化
  • 金融機関(メインバング)との関係強化
  • 専門家費用の補助がある

難易度

やや難

財務状況の分析が必要ですので、この分析が少々やっかいです。
「4.経営改善計画」の“入口”として位置づけられます。

向いている企業

  • 赤字ではないが先行き不安
  • 数字がよく分からない
  • 早めに手を打ちたい経営者(数ヶ月先の資金繰りが不安)

4.経営改善計画(405事業)とは

【資金繰りが厳しい企業の再建計画】

制度概要

経営改善計画は、金融機関・認定支援機関と一体となって作成する再建計画です。

対象は、

  • 赤字が続いている
  • 借入返済が厳しい
  • 財務内容に大きな課題がある
    といった企業です。

主なメリット

  • 金融機関とのリスケ(返済条件変更)が進めやすい
    ※初めてのリスケは進めやすいですが、2回目以降のリスケは難しくなります
  • 経営課題を抜本的に整理できる
  • 専門家費用の補助がある

難易度

かなり難

詳細な財務分析、実現性の高い改善策、金融機関との調整が不可欠です。
メインバンクだけではなく融資を受けている全金融機関との調整が必要です。

向いている企業

  • 資金繰りが深刻
  • 経営を立て直したい
  • 本気で再建に取り組む覚悟がある

4つの制度を比較表で整理

制度名主な目的対象企業難易度主なメリット
経営革新計画新事業・新分野成長志向企業やや高め補助金加点・信用力向上
経営力向上計画生産性向上幅広い中小企業やや低め税制優遇・補助金加点
早期経営改善計画予防将来不安のある企業やや高め見える化・関係強化
経営改善計画再建経営不振企業かなり高いリスケ・再建支援

行政書士としての実務的まとめ

重要なのは、「どの制度が優れているか」ではなく、「今の自社に合っているか」です。

  • 成長・投資を目指すなら → 経営力向上計画・経営革新計画
  • 資金繰りに不安を感じたら → 早期経営改善計画(これを見逃すと次に進んでしまいます)
  • すでに厳しい状況なら → 経営改善計画(返済計画の見直しを検討します)

制度選択を誤ると、
👉 時間だけがかかる
👉 金融機関評価が下がる
👉 補助金チャンスを逃す
といったリスクもあります。


最後に

経営計画系制度は、
「知っている経営者」と「知らない経営者」で、数年後に大きな差がつきます。

行政書士飯島事務所(認定支援機関登録)では、

  • 制度選択のアドバイス
  • 計画作成
  • 補助金・融資との連動
    まで、実務重視でサポートしています。

「自社はどれに該当するのか?」そう思った段階が、最も良いタイミングです。
お気軽にご相談ください。