2025年1月、日本銀行は政策金利を0.5%に引き上げ、2024年第4四半期の借入金利水準判断DIは2007年と同等の水準まで上昇しました。
また12月には0.75%への追加利上げが決定され、企業を取り巻く金融環境は大きく変化しています。
今後も利上げが継続される可能性も囁かれています。
帝国データバンクの調査によれば、借入金利が上昇した場合、企業の57.6%が自社の業績に「マイナスの影響」を見込んでおり、特に「返済負担の増加」や「利益の減少」を懸念する企業が多い状況です。
この記事では、金利上昇局面で経営を守るために、真っ先に見直すべき固定費5項目を実務的に解説します。
なぜ金利上昇で「固定費」が重要なのか?
金利上昇が中小企業に与える影響
帝国データバンクの調査によれば、借入金利が0.25%上昇した場合、1社平均では年間で64万円分の経常利益が減少する試算となっています。
また、業種別には製造業よりも非製造業で、企業規模別には大企業よりも中小企業で、経常利益対比で見た純利払い負担の増加幅が大きくなるとされています。
固定費削減が最優先である理由
金利上昇で利払い負担が増える中、企業が取るべき対策は以下の3つです。
| 対策 | 効果 | 難易度 |
|---|---|---|
| ①売上を増やす | 利益増 | 高い |
| ②変動費を削減 | 一時的な利益増 | 中程度 |
| ③固定費を削減 | 継続的な利益増 | 中程度 |
固定費削減の最大のメリットは、売上に関係なく継続的に利益が増えることです。
固定費削減の効果(試算例)
| 項目 | 現状 | 固定費10%削減後 |
|---|---|---|
| 売上 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 変動費 | 500万円 | 500万円 |
| 固定費 | 400万円 | 360万円 |
| 営業利益 | 100万円 | 140万円 |
| 利益率 | 10% | 14% |
固定費を10%削減すれば、売上を変えずに利益率を4%改善できます。
【最重要】真っ先に見直す固定費5項目
項目1:人件費(時間外労働・アウトソーシング)
なぜ人件費か?
多くの場合、固定費の中で最も大きな割合を占めるのは人件費です。
ただし、基本給のカットは従業員のモチベーション低下につながるため、見直すべきは以下の2点です。
見直しポイント①:時間外労働の削減
削減方法:
- 業務の優先順位を明確化(緊急度・重要度マトリクス)
- 会議時間の短縮(30分→15分、週1回→隔週)
- 無駄な報告業務の削減(日報→週報)
効果試算:
従業員10名、月平均残業20時間/人、残業単価2,500円の場合
削減前:10名 × 20時間 × 2,500円 × 12ヶ月 = 年間600万円
10時間削減後:10名 × 10時間 × 2,500円 × 12ヶ月 = 年間300万円
→ 年間300万円の固定費削減
見直しポイント②:アウトソーシングの活用
外注すべき業務:
- 経理・給与計算(記帳代行、給与計算代行)
- 総務・庶務(社会保険手続き、労務管理)
- 定型業務(データ入力、書類作成)
メリット:
- 正社員の人件費を「変動費化」できる
- 専門業務は外部のプロに任せて品質向上
- 社員はコア業務に集中できる
注意点:
- 外注費が正社員の人件費を上回らないか試算
- セキュリティ・機密保持契約を締結
項目2:賃料(オフィス・店舗・倉庫)
なぜ賃料か?
テレワーク化が進み、郊外移転や規模縮小といった取り組みを進めることでオフィス賃料を削減する企業も増えています。
賃料は毎月固定で発生するため、削減効果が継続的です。
見直しポイント①:現在のスペースが適正か確認
チェック項目:
- [ ] 従業員数に対してオフィスが広すぎないか
- [ ] 使用頻度の低い会議室・応接室がないか
- [ ] テレワーク導入でデスクが余っていないか
- [ ] 倉庫に長期間動かない在庫が眠っていないか
削減方法:
- フレキシブルオフィス(必要な時だけ借りる)
- 会議室は外部レンタルスペースを活用
- 倉庫は外部の貸倉庫に移転(駅近オフィスから郊外倉庫へ)
見直しポイント②:賃料交渉・移転
賃料交渉のタイミング:
- 契約更新時(2年ごと)
- 近隣の賃料相場が下がった時
- 長期入居している場合(5年以上)
交渉の進め方:
- 近隣の賃料相場を調査(不動産サイトで確認)
- 「更新するか移転を検討中」と貸主に伝える
- 5~10%の値下げ交渉を目指す
効果試算:
現在の賃料:月30万円
10%削減成功:月27万円
→ 年間36万円の固定費削減
項目3:通信費(電話・インターネット・携帯)
なぜ通信費か?
通信費は「見直しが簡単で効果が出やすい」項目です。契約プランの変更だけで即座に削減できます。
見直しポイント①:固定電話・FAXの必要性
チェック項目:
- [ ] 固定電話の着信件数は月何件か?
- [ ] FAXの送受信は月何件か?
- [ ] 固定電話なしで業務に支障はないか?
削減方法:
- 固定電話を廃止し、050番号(IP電話)に切り替え(ただし、イメージダウンの懸念もあります)
- FAXをクラウドFAX(メール受信)に変更
- 不要な電話回線を解約
効果試算:
固定電話3回線:月15,000円
050番号(IP電話):月3,000円
→ 年間144,000円の固定費削減
見直しポイント②:携帯電話プランの見直し
削減方法:
- 大手キャリアから格安SIMに変更
- 通話が少ない社員はデータ専用SIMに変更
- 法人契約で一括割引交渉
効果試算:
従業員10名、大手キャリア月7,000円/人
格安SIM:月3,000円/人
→ 10名 × 4,000円 × 12ヶ月 = 年間48万円の固定費削減
項目4:光熱費(電気・ガス)
なぜ光熱費か?
電気やガスの自由化に伴い多くの企業が新規参入を果たしたことで、安価でありながら大手電力会社と同品質のサービスを受けられる可能性が出てきました。
見直しポイント①:電力会社・ガス会社の変更
削減方法:
- 現在の電気・ガス料金を把握(直近3ヶ月の請求書)
- 一括見積サイトで比較(エネチェンジ、価格.comなど)
- 年間10~20%削減できる会社に切り替え
注意点:
- 価格だけでなく、契約期間・解約金も確認
- 停電リスクは大手と同じ(送電網は共通)
効果試算:
現在の電気代:月10万円
15%削減成功:月8.5万円
→ 年間18万円の固定費削減
見直しポイント②:省エネ設備への投資
即効性のある対策:
- LED照明への切り替え(電気代40~50%削減)
- 古いエアコンを省エネ機種に更新(電気代30%削減)
- 人感センサー付き照明の導入
投資回収期間の目安:
- LED照明:2~3年
- 省エネエアコン:3~5年
項目5:車両費(社用車・営業車)
なぜ車両費か?
車両の保有は固定資産税、自動車税、駐車場代、メンテナンス代などの費用を伴うため企業にとって負担になりやすいです。
見直しポイント①:社用車の保有台数
チェック項目:
- [ ] 各車両の月間稼働率は?(50%以下なら削減対象)
- [ ] 特定の人しか使っていない車両はないか?
- [ ] 営業スタイルが変わり、車両が不要になっていないか?
削減方法:
- 稼働率の低い車両を売却
- カーシェア・レンタカーに切り替え
- 営業スタイルをオンライン商談に変更
見直しポイント②:カーシェア・レンタカーの活用
比較表:
| 項目 | 社用車保有 | カーシェア | レンタカー |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 200~300万円 | なし | なし |
| 月額固定費 | 3~5万円 | なし | なし |
| 利用料金 | – | 200円/15分~ | 5,000円/日~ |
| 向いている用途 | 毎日使用 | 短時間・近距離 | 長時間・遠距離 |
効果試算:
社用車1台の年間コスト:
車両ローン 月3万円 + 駐車場代 月2万円 + 保険 月1万円 + ガソリン・メンテ 月2万円 = 月8万円
→ 年間96万円
カーシェア(月10回、1回2時間):
1回2,000円 × 10回 × 12ヶ月 = 年間24万円
→ 年間72万円の固定費削減
固定費見直しの実践ステップ
ステップ① 現状の固定費を可視化する
やるべきこと:
- 直近3ヶ月の損益計算書を用意
- 固定費を項目別に分類(人件費、賃料、通信費など)
- 各項目の金額と割合を表にまとめる
ステップ② 削減目標を設定する
目標設定の基準:
- 短期目標(3ヶ月):固定費全体の5%削減
- 中期目標(1年):固定費全体の10~15%削減
優先順位の付け方:
- 削減効果が大きい項目(金額ベース)
- 削減の難易度が低い項目(すぐに実行可能)
- 業務への影響が少ない項目
ステップ③ 実行・検証・改善
PDCAサイクル:
- P(計画):削減項目と目標金額を決定
- D(実行):契約変更、交渉、業務改善を実施
- C(検証):毎月の固定費を前年同月と比較
- A(改善):効果が出ない項目は別の方法を検討
固定費削減で陥りがちな3つの失敗
失敗① 人件費削減で従業員のモチベーション低下
NG例:
- 基本給の一律カット
- ボーナスの全額カット
- 福利厚生の大幅削減
正解:給与カット、人員削減は最後の最後の対策と考えてください。
- 時間外労働の削減(業務効率化)
- アウトソーシングで社員の負担軽減
- 成果主義の導入(頑張った人が報われる)
失敗② 品質・サービスの低下
NG例:
- 必要な設備投資まで削減
- 顧客対応の人員削減
- 安かろう悪かろうの外注先に変更
正解:
- 顧客満足度に直結する項目は削減しない
- 品質を維持できる範囲で外注先を選定
- 設備投資は「省エネ・効率化」を優先
失敗③ 短期的な視点での削減
NG例:
- 1ヶ月で結果を求める
- 効果測定をしない
- 従業員に説明せず一方的に実施
正解:
- 年間計画を立てて段階的に実施
- 毎月の効果を数値で測定
- 従業員に目的と効果を共有
まとめ|金利上昇時代の経営の鉄則
金利上昇局面では、利払い負担の増加を固定費削減でカバーすることが経営の鉄則です。
今すぐ取り組むべき5項目
✅ 人件費:時間外労働の削減、アウトソーシング活用
✅ 賃料:オフィス規模の見直し、賃料交渉
✅ 通信費:固定電話・携帯プランの見直し
✅ 光熱費:電力会社変更、省エネ設備導入
✅ 車両費:カーシェア・レンタカー活用
固定費削減の3原則
- 長期的な視点:年間計画で段階的に実施
- 優先順位:効果が大きく、難易度が低い項目から
- 品質維持:顧客満足度に直結する項目は削減しない
帝国データバンクの調査では、借入金利が1%上昇した場合、財務体質を改善すると回答した企業が27.2%で最も高かったことからも、固定費見直しによる財務体質改善が重要であることがわかります。
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金利上昇で利払い負担が増える今こそ、固定費の見直しで財務体質を強化しましょう