「赤字」という言葉の重さに、押しつぶされていませんか?

決算書を開いて、損益がマイナスになっているのを見たとき——経営者として、正直なところどう感じるだろうか。

「このまま続けられるのか」「銀行に知れたらどうなる」「何から手をつければいいのかわからない」。
こうした不安が頭の中を占領して、むしろ動けなくなってしまう経営者は少なくない。

一つ、事実を先にお伝えしておきます。
国税庁の統計によると、日本の法人の65%以上が赤字申告をしている。
中小企業に絞れば、6〜7割が赤字という調査結果もある。
つまり赤字は「特別な失敗」ではない。問題は赤字の「中身」と「対応の速さ」だ。

赤字が続いても会社が倒産するわけではない。
会社が潰れるのは「現金が尽きたとき」です。
赤字決算でも手元資金や融資の余地があれば経営は続く。
ただし、放置すれば選択肢は確実に狭まっていく。
銀行からの信用が落ち、融資が通りにくくなり、気がついたときには手の打ちようがない——という状況に追い込まれた経営者を、何人も見てきました。

だからこそ、動くなら「今」。
そして「正しい順番で」動くことが、立て直しの成否を決める。

この記事では、実際に赤字から業績を回復させた中小企業が実践していた5つのステップを、認定支援機関として解説します。

ステップ1|赤字の「原因」を特定する──どの利益が赤字か見極める

まず最初にやるべきことは「赤字の感情的な受け止め」ではなく、「赤字の種類と原因の特定」。

赤字にも種類があり、損益計算書には4つの利益段階があり、どの段階で赤字が発生しているかによって対応策がまったく異なります。

利益の種類意味赤字の深刻度
売上総利益(粗利)売上から原価を引いた利益最も深刻。本業の根幹に問題あり
営業利益粗利から販管費を引いた利益深刻。固定費・人件費に問題あり
経常利益営業利益±財務活動の損益借入過多や利息負担が原因のことも
純利益特別損益を加味した最終利益一時的要因(固定資産売却損等)のことも多い

粗利が出ているのに営業利益が赤字なら、コスト構造の問題。
営業利益は黒字なのに経常利益が赤字なら、借入金の利息負担が重すぎる可能性あり。
このように、「どこで赤字が発生しているか」を先に把握しないと、的外れな対策に時間とお金を費やすことになる。

まず決算書と月次試算表を手元に引き寄せることから始めよう。

ステップ2|資金繰り表を作る──「手元現金の見える化」が判断の土台になる

赤字経営で最も怖いのは「現金がいつ尽きるか」がわからないまま経営を続けること。

利益と現金は別物。
損益計算書が赤字でも現金が残っていることはあるし、逆に黒字に見えても手元現金が足りなくなることもある(これがいわゆる「黒字倒産」だ)。

だからこそ、最低でも3ヶ月先、できれば6ヶ月先まで見通した「資金繰り表」を作ることが先決です。

資金繰り表に記載すべき主な項目はこちら。

【収入の部】

  • 売上入金(月別・得意先別)
  • 借入金の入金
  • その他収入(補助金入金予定など)

【支出の部】

  • 仕入・外注費の支払
  • 人件費(給与・社会保険料)
  • 家賃・リース料などの固定費
  • 借入金の返済
  • 税金・社会保険料の納付

この表を作るだけで「あと何ヶ月持つか」が可視化され、資金繰り表は作るだけで経営判断の質が上がります。
赤字の会社ほど、まずここから着手してほしい。

ステップ3|固定費を見直す──「聖域」を作らないコスト構造の再構築

現状把握が終わったら、次は「支出の構造改革」。
赤字が続いている会社の多くは、固定費の水準が売上に見合っていないという共通点を持っている。

固定費の主な内訳と見直しポイントを整理します。

固定費の項目見直しのポイント
人件費残業・外注費の構造を見直す。リストラより「業務の選択と集中」が先
家賃・リース料解約・縮小・移転の可能性を検討。交渉余地がある場合も
広告・販促費効果測定できていないものは即見直し
通信・サブスクリプション使っていないツール・契約の棚卸し
借入金の利息条件変更(リスケ)や借り換えで圧縮できる場合あり

ここで重要なのは「聖域を作らない」こと。
「ここだけは削れない」という思い込みが、経営改善を遅らせる最大の原因になります。
ただし、人件費の削減は従業員のモチベーションに直結するため、安易なカットより「業務の効率化・再配置」を優先するのが原則だ。(人件費は最後の最後)

固定費を削減しながら、同時に粗利率を上げる施策(価格見直し・仕入れ交渉・不採算品の廃止)を並行して進めることが理想。

ステップ4|収益性の高い事業に集中する──「選択と集中」で限られたリソースを最大化する

赤字が続いている会社の多くは「何でもやっている」という状態に陥っています。
売上を維持しようとするあまり、利益の出ない仕事も引き受け続けた結果、人手も資金も分散していませんか?

どの事業・商品・顧客が利益を生んでいるかを把握することが、次の一手を決める羅針盤。

具体的には以下の分析を行います。

①商品・サービス別の粗利率を算出する
売上高が大きくても、粗利率が低い商品は会社の体力を削っている。
粗利率が低い商品への依存度を下げ、粗利率の高い商品・サービスに営業リソースを集中させる。

②得意先別の収益性を確認する
「売上の大きいお客様が必ずしも利益に貢献しているとは限らない」というのはよくある話。
支払条件・値引き率・対応コストを加味した実質的な収益性を確認しよう。

③不採算事業・商品の廃止・縮小を決断する
感情的に「続けたい」と思う事業があっても、数字が証明する現実から目を背けてはいけません。
選択と集中は経営者の最も重要な仕事の一つ。

ステップ5|銀行・認定支援機関と早期に連携する──「計画」があれば銀行は動く

赤字になると「銀行に知られたくない」「相談したら融資を引き上げられる」と考える経営者は多い。
しかし、これは大きな誤解。

銀行が最も恐れているのは、赤字の事実ではなく「経営者が現状を把握していないこと」「改善の意思と計画がないこと」だ。

具体的な経営改善計画を持って早期に相談に来る経営者と、資金が尽きてから駆け込んでくる経営者では、銀行の対応はまったく異なります。
前者には「条件変更(リスケジュール)」「追加融資」という選択肢が残っているが、後者にはその余地がほとんどない。

動くなら、資金が残っているうちに。

ここで活用してほしいのが「経営改善計画(405事業)」。
認定支援機関(認定経営革新等支援機関)のサポートのもとで経営改善計画を策定し、金融機関に提示することで、返済条件の変更や新規融資交渉を有利に進められる仕組みです。
費用の3分の2は国が補助する制度もあります。

また、利益改善が見えてきた段階では、補助金の活用も有効な手段になる。
設備投資や販路開拓、IT導入を対象とした補助金を組み合わせることで、自己資金を抑えながら回復を加速できます。

赤字からの立て直しに必要な「時間感覚」

経営改善は、一夜にして成果が出るものではありません。
しかし、正しいステップを踏めば、多くの中小企業は1〜2年で収益構造を変えることが可能。

重要なのは「手を打つタイミング」。

  • 資金に余裕があるうちに動けば、選択肢は広い
  • 資金が逼迫してから動くと、選択肢は急激に狭まる
  • 手を打たなければ、じわじわと選択肢が消えていく

今の段階が「まだ動ける状態」であれば、それは最大のチャンス!
今すぐ動くことが、最善の経営判断です。

よくある質問(FAQ)

Q. 赤字でも銀行融資を受けることはできますか?
A. 可能です。
銀行は赤字の事実よりも「改善の見通しと計画があるか」を重視します。
認定支援機関が関与した経営改善計画があると、金融機関との交渉を有利に進めやすくなります。

Q. 自力で経営改善計画を作れますか?
A. 基本的な資金繰り表やコスト分析は自社でも着手できます。
ただし、金融機関への提出を前提とした計画書や、補助金申請に活用できる計画書は、認定支援機関のサポートを活用するほうが精度・採択率が大幅に向上します。

Q. 経営改善計画(405事業)とはどのような制度ですか?
A. 中小企業庁が設けた支援制度で、認定支援機関と連携して経営改善計画を策定し、金融機関に提出するものです。
計画策定費用の最大2/3(上限200万円)が補助されます。
詳しくは当事務所のコラム「経営改善計画(405事業)とは?」をご覧ください。

Q. 赤字から脱却するまでにどのくらいの期間がかかりますか?
A. 赤字の原因・規模・資金状況によって異なりますが、コスト構造の見直しと収益集中化を徹底した場合、早いケースでは1期(1年)で改善の手応えを感じられます。
重要なのは「焦って一発逆転を狙わないこと」と「正しい順番で動くこと」です。

まとめ:赤字からの立て直しは「正しい順番」で動けば必ず道は開ける

5つのステップを改めて整理します。

  1. 原因特定——どの利益が赤字か、決算書を読み解く
  2. 資金繰り表の作成——手元現金の見える化で判断軸を作る
  3. 固定費の見直し——聖域を作らず、コスト構造を再構築する
  4. 選択と集中——収益性の高い事業・商品・顧客に経営資源を集める
  5. 銀行・認定支援機関との早期連携——「計画」を持って動く

どのステップも、共通して言えることがあります。
「わかっているけど動けない」状態から抜け出すには、一人で抱え込まないことが最も重要。

経営改善は孤独な戦いではなく、正しい伴走者がいれば、道は必ず開けます。

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