はじめに:「お金の調達先」は1つじゃない

「設備を入れたいが資金が足りない」「新事業に踏み出したいが、どこからお金を引っ張ればいいかわからない」
──中小企業の経営者から、こういった相談を日常的に受けます。

多くの経営者が資金調達と聞いて真っ先に思い浮かべるのは「銀行からの融資」ではないでしょうか。
しかし実際には、中小企業が使える資金調達の手段は複数あり、それぞれに適した場面・目的・タイミングが異なります。

この記事では、補助金・融資・出資という3つの軸を「資金調達マップ」として整理し、どの場面でどの手段を使えばよいかを実務目線で解説します。
正しく組み合わせれば、返済負担を抑えながら、会社の成長に必要な資金を確保できます。


資金調達の全体像:3つの大きな柱

資金調達の方法は大きく3つに分類できます。

① 補助金・助成金(返済不要) 国や都道府県が特定の事業目的に応じて支給する資金で、原則として返済不要です。
ただし審査・採択があり、後払い(精算払い)が基本です。

② 融資(借入) 金融機関から資金を借り入れる方法です。
返済義務がありますが、使途の自由度が高く、まとまった資金を比較的短期間で確保できます。

③ 出資(エクイティファイナンス) 投資家やベンチャーキャピタルなどから出資を受ける方法です。
返済不要ですが、株式の一部を渡すことになり、経営への関与が生じる場合があります。

この3つを状況に応じて組み合わせることが、資金調達の王道です。


補助金:「返済不要のお金」を戦略的に使う

補助金の最大のメリットは、返済が不要な点です。
ただし、「申請すれば必ずもらえる」わけではなく、採択競争があります。
また、補助対象は「後払い」が原則のため、一時的な立替資金が必要です。
この点を理解した上で活用しましょう。

2026年現在の主要補助金

【国の補助金】

  • 新事業進出・ものづくり補助金(旧:ものづくり補助金)
    設備投資や新製品・サービス開発に使える補助金の代表格。2026年度より新事業進出補助金と統合され、より幅広い用途に対応。補助上限は750万円〜最大4,000万円程度。
  • IT導入補助金
    ITツール・ソフトウェアの導入費用を補助。DX推進を検討する企業に特に有効。
  • 中小企業省力化投資補助金
    人手不足解消を目的とした設備投資(ロボット、券売機、スチコンなど)に対応。カタログ型で選びやすいのが特徴。
  • 小規模事業者持続化補助金
    販路開拓・集客強化などに使える比較的小規模の補助金。小規模事業者(従業員数が少ない企業)が対象。

【東京都の補助金】

  • 事業環境変化に対応した経営基盤強化事業
    賃上げ重点コースなど、特定要件を満たす企業向けの支援制度。
  • 創業助成事業
    創業5年未満の企業向け。

補助金活用の3つのポイント

1. 「何のための投資か」を明確にする
補助金は事業計画の「ストーリー」が採否を左右します。
「なぜこの投資が必要か」「投資後にどう変わるか」を具体的に示せる企業が採択されます。

2. 公募スケジュールを把握して動く
補助金には公募期間があり、申請のタイミングを逃すと次の公募まで待つことになります。
少なくとも6ヶ月先の投資計画を見据えて動くことが重要です。

3. 採択後の手続きも見越して準備する
補助金は採択がゴールではありません。
その後の「交付申請」「実績報告」「精算払い」まで対応できて初めて資金を受け取れます。
採択後の手続きに対応できる専門家と組むことが採択率・実務完遂率を高めます。


融資:「使いやすさ」と「コスト」を理解して借りる

補助金は返済不要ですが、公募タイミングや採択の不確実性があります。
「今すぐ資金が必要」という場面で主力となるのが融資です。

融資の主な選択肢

日本政策金融公庫(政策公庫)
国が運営する政府系金融機関で、民間銀行より融資を受けやすい傾向があります。
創業期や財務基盤が弱い企業でも相談しやすく、低金利での融資が期待できます。
設備資金・運転資金の両方に対応。

信用保証協会付き融資(保証付き融資)
民間銀行から借りる際、信用保証協会が保証人となる制度。
財務が弱い企業でも銀行融資を受けやすくなります。
都道府県ごとに制度融資が用意されており、金利優遇を受けられる場合もあります。

民間銀行融資
財務状況・返済能力が重視されます。
決算書の内容が直接融資条件に影響するため、日頃から財務内容を整えておくことが重要です。
銀行は「今の決算書」だけでなく「将来の見通し」も見ています。

ビジネスローン・ノンバンク
審査が比較的緩やかですが、金利が高め。
短期の急場をしのぐ用途に限定するのが賢明です。

融資を活用する際の注意点

金利上昇局面の現在(2026年)、固定費としての返済負担は経営リスクになります。
必要額だけを借り、返済期間と金利を慎重に設定することが重要です。
また、融資を受ける前に「経営改善計画」を策定しておくと、金融機関との信頼関係を構築しやすくなります。


出資:成長フェーズの「加速装置」として使うはじめに

出資(エクイティファイナンス)は、事業の急成長フェーズや大型投資が必要な局面で有効です。
ただし、株式の一部を渡すことで経営への関与が生じる可能性があります。

中小企業が関わる主な出資形態としては、エンジェル投資家(個人)からの出資や、地域のベンチャーキャピタル、中小企業投資育成株式会社などが挙げられます。

出資は「返済不要」という点で補助金と似ていますが、投資家には成長による利益還元が求められます。
成長ストーリーを描けない段階での出資依存は避け、事業の方向性が定まってから検討するのが現実的です。

今までの関係性から外部の資金を取り入れている事業者もよく見かけますが、外部資金はその分の支配力があることをお忘れなく。


資金調達マップ:目的別の使い分け早見表はじめに

目的・場面優先すべき手段補足
設備投資・新製品開発補助金+融資の組み合わせ補助金で一部を賄い、残りを融資で調達
運転資金の確保融資(政策公庫・保証付き)補助金は後払い、また補助金目的は運転資金ではない
急な資金ショート融資(緊急)・ファクタリング補助金や出資では間に合わない
ITツール・DX導入IT導入補助金+自己資金補助率が高く活用しやすい
人手不足解消(設備)省力化投資補助金+融資カタログ型で申請しやすい
新事業・業態転換新事業進出補助金+融資事業計画の精度が採否を決める
大型成長投資融資+出資の組み合わせ財務レバレッジを活用

認定支援機関が教える「組み合わせ戦略」の実例

ケース①:製造業・設備投資
設備投資3,000万円のうち、ものづくり補助金で1,500万円を確保し、残り1,500万円を政策公庫の長期低利融資で調達。補助金の審査期間中は短期融資で立替資金を確保。

ケース②:小売業・省力化
人手不足に悩む飲食店が、省力化投資補助金(カタログ型)で券売機・配膳ロボットを導入。補助率1/2で自己負担を半減。残りは信用保証協会付き融資で対応。

ケース③:サービス業・新事業進出
既存事業で安定収益を確保しながら、新事業進出補助金を活用して新市場へ参入。事業計画策定は認定支援機関のサポートを活用し、採択率を向上。


まとめ:資金調達は「戦略」だ

資金調達を「困ったときに銀行に相談する」という受け身の姿勢でいると、必要なタイミングで資金が揃わず、経営判断が遅れます。

大切なのは、先手を打って資金調達の全体像を設計することです。
補助金・融資・出資のそれぞれの特性を理解し、投資計画に合わせて最適な組み合わせを選ぶ。
それができる経営者は、資金面での機会損失を防ぎ、競合に差をつけることができます。

「どの補助金が使えるか」「融資の条件を改善するには何が必要か」
──こうした疑問がある方は、ぜひ一度、認定支援機関へご相談ください。
自社の状況に合った資金調達の「最適解」を一緒に探しましょう。