最近、能登半島地震、各地の豪雨災害、突発的な雷雨や雹害など、自然災害のニュースが続いています。
「いつ来てもおかしくない」と頭ではわかっていても、目の前の業務に追われ、災害への備えは後回しになっている経営者の方は多いのではないでしょうか。

しかし、現実は厳しさを増しています。

南海トラフ巨大地震の発生確率は、政府の地震調査委員会により30年以内に80%程度へと引き上げられました。

首都直下地震、線状降水帯による豪雨、停電、サイバー攻撃
——いつ自社が被災しても不思議ではない時代です。

そこで本記事では、中小企業が今すぐ取り組むべきBCP対策の第一歩として、「事業継続力強化計画(通称:ジギョケイ)」の活用方法を、認定支援機関として中小企業を支援してきた経験をもとに解説します。

BCPとは何か?基本を押さえる

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。

中小企業庁の定義では、企業が自然災害・大火災・テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時の事業継続方法を取り決めておく計画とされています。

ポイントは「平時に決めておく」こと。

緊急事態が起きてから考えるのでは間に合いません。
事前に「何を守り、何を続け、どう復旧させるか」を決めておくことが、企業を守る命綱になります。

なぜ中小企業こそBCPが必要なのか

多くの大企業ではBCP対策を行っていますが、「BCPは大企業のもの」と思っていませんか。

実はその逆です。

中小企業は経営基盤が大企業に比べて脆弱なため、緊急事態の発生によって廃業に追い込まれるリスクが大企業よりも高いのです。

内閣府の「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によると、BCPの策定状況は次のとおりです。

  • 大企業:策定済み 76.4%
  • 中小企業:策定済み 45.5%

大企業の8割近くが策定している一方、中小企業はまだ半数以下という状況です。

しかし災害の影響を受けやすいのは、規模の小さい中小企業の方です。
備えのある会社とない会社では、復旧スピードに大きな差が生まれます。

中小企業がBCPに取り組まない3つの理由

これまで中小企業の経営者から相談を受けるなかで、BCPに着手できていない理由は概ね次の3つに集約されます。

理由①「やる時間がない」

経営者は日常業務に追われています。
「いつかやらないと」と思いつつ、緊急性が低いため後回しになりがちです。

理由②「何から始めればいいかわからない」

BCPと聞くと、分厚いマニュアルを想像する方が多いものです。
「専門知識が必要そう」「うちには無理」と感じ、最初の一歩が踏み出せません。

理由③「メリットが見えない」

「お金にならないこと」に時間とコストをかけることに、経営者は慎重です。
緊急事態が起きるかどうかわからないものに、なぜ今投資するのか
——納得感がないと動けません。

解決策:「ジギョケイ」から始める

これらの課題を一気に解決する方法があります。
それが、経済産業省が認定する「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」です。

ジギョケイとは

ジギョケイは、中小企業庁が中小企業のための取り組みやすいBCPとして位置づけた制度です。
通常のBCPと比べて以下の特徴があります。

  • 様式がシンプルで、A4数ページで策定可能
  • 専門知識がなくても、手引きに沿って書けば作成できる
  • 経済産業大臣の認定を受けると、複数の優遇措置が受けられる

「いきなり本格的なBCPは難しい」という中小企業の現実に合わせた、現実的な制度です。

ジギョケイ認定で得られる5つのメリット

①補助金審査での加点

ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金など、主要な補助金で加点項目になっています。
「補助金を狙っている」中小企業には大きなメリットです。

②税制措置(防災・減災設備の特別償却)

認定計画に基づいて取得した防災・減災設備(自家発電機、制震・免震装置など)について、取得価額の20%の特別償却が受けられます。

③金融支援(日本政策金融公庫の低利融資)

日本政策金融公庫から、設備資金について通常より低い金利で融資を受けられる制度があります。

④信用保証の特例

信用保証協会の保証枠が拡大される特例もあります。

⑤認定マークによる信用力向上

認定マークを名刺・ホームページ・契約書類に表示でき、取引先・金融機関への信用アピールにつながります。

ジギョケイ策定の5ステップ

STEP1 目的の明確化

「なぜBCPに取り組むのか」を整理します。
従業員・取引先・地域への責任を踏まえ、自社の事業継続が果たす役割を考えます。

STEP2 自社のリスクを特定する

自社の所在地で起こりうる災害を確認します。
ハザードマップ・気象情報・地震調査研究推進本部の資料などを活用し、地震・水害・停電・感染症・サイバー攻撃などのリスクを洗い出します。

STEP3 ヒト・モノ・カネ・情報への影響を検討する

特定したリスクが発生した場合に、自社の経営資源にどんな影響が出るかを考えます。

  • ヒト:従業員の安否確認、出勤可能者数
  • モノ:設備・建物・在庫への被害
  • カネ:休業中の固定費、復旧資金
  • 情報:データ消失・システム停止

STEP4 対策を検討する

事前対策と発災後の対応を検討します。

  • 事前対策:耐震補強、データバックアップ、安否確認手段の確保、損害保険の見直し
  • 発災後の対応:初動対応マニュアル、優先業務の決定、代替手段の確保

特に重要なのがリスクファイナンスです。
休業期間中も従業員給与・借入返済・リース料などの固定費は発生します。
その原資をどう確保するか(損害保険、金融機関からの借入など)を事前に決めておくことが重要です。

STEP5 平時の取組み(訓練・見直し)

計画は作って終わりではありません。
定期的な訓練と見直しが、計画の実効性を高めます。

中小企業基盤整備機構が机上訓練ツールを無料提供しているので、活用するとよいでしょう。

ジギョケイの申請手続き

申請は電子申請(GビズID必須)で行います。

  • 申請先:経済産業局(管轄エリアによる)
  • 認定までの期間:おおむね45日程度
  • 申請費用:無料

GビズIDプライムの取得には2〜3週間かかるため、早めの準備をお勧めします。

ジギョケイから本格BCPへのステップアップ

ジギョケイはあくまで「取り組みやすいBCPの入口」です。

事業規模が大きくなり、取引先からBCP策定を求められるなど、より本格的な計画が必要になった段階で、内閣府が示す「事業継続ガイドライン」に沿った本格的BCPへとステップアップしていきます。

まずは取り組みやすいジギョケイから始め、自社の事業継続力を段階的に高めていく
——これが中小企業にとって現実的なアプローチです。

BCPのための補助金もありますので、これを活用することで投資金額を大幅に減らすことが可能です。

まとめ

地震・大雨・サイバー攻撃など、中小企業を取り巻くリスクは年々高まっています。
「BCPは大企業のもの」という時代は終わりました。

経営基盤の脆弱な中小企業こそ、平時の備えが企業の存続を左右します。

「うちにはBCPなんて無理」と思っている経営者の方こそ、まずは「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」から始めてみてください。

A4数ページの計画書を作るだけで、補助金加点・税制優遇・低利融資・信用力向上といった具体的なメリットが得られます。

当事務所では、認定支援機関として中小企業の事業継続力強化計画の策定・申請をサポートしています。
「自社のリスクは何か」「どこから手をつければいいか」という段階からのご相談も歓迎しています。

地震・大雨が来てから慌てないために、今日から備えの一歩を踏み出しましょう。

行政書士×認定支援機関による経営支援

▲行政書士×認定支援機関が中小企業の経営を支援します